ミリ波センシングシステムの高機能及び実用化

マイクロ波・ミリ波帯域のセンシング技術は、過去数十年間にわたり、電磁波工学およびリモートセンシング分野で広く研究が展開されてきた(少し詳しい話はこちらの資料を参照)。そのため、ハードウェアデバイスは既に製品化されたケースが多い。これからの課題は、関連技術を適切な産業応用に結びつけることである。新しい技術を活用して従来の製品を低コスト化・高機能化することが求められている。

Anritsu MS2036(2-6GHz)

Anritsu MS46131(4-40GHz)

左図に示すベクトルネットワークアナライザ(VNA、Vector Network Analyzer)は、高周波(RF)およびマイクロ波回路の特性を測定するための重要な計測器です。レーダーやセンシングの応用において、標準的な評価データを取得することができます。当研究室では、2-6GHzおよび4-40GHzの広帯域をカバーするVNA装置を保有しており、これにより広帯域のミリ波センシング(分解能:約1cm)を実現しています(下図参照)。ただし、このような高性能な測定器にはいくつかの制約があり、実際の応用において以下の課題が存在します。

a. VNA装置は非常に大型で高価です。安価なモデルでも数百万円するため、手持ちやドローン搭載が困難。

b. イメージング応用では高精度の位置情報が必要で、他に測位技術を導入する必要がある。

c. 広帯域信号は高い分解能を提供しますが、電波法の制限により全ての帯域を使用することはできません。

前職の大阪大学では、問題aに対して光技術を融合し、広帯域のミリ波レーダシステムを小型化し、ドローン搭載を実現した。このシステムにより、建造物外壁の内部欠陥(タイルとモルタル層の間の空隙やコンクリートとモルタル層の間の空隙など)を非接触で直接可視化することが可能になった(詳細はこちら)。今後は、問題bとcに対して以下の課題に取り組んでいる:

マルチセンサによる自我位置推定と物性情報の可視化

加速度センサ、カメラ、Lidar、レーダ信号を組み合わせ、高精度で位置を推定することが可能。限られたデバイスで最高の精度を出すことがポイントである。さらに、従来は見えなかったり、量化できなかったりする情報を可視化することも重要な課題となっている。

低コスト車載レーダによるイメージングアルゴリズムの開発

低コストの車載レーダでも、周波数帯域からの分解能限界を超えてミリメートル級の変位を検知する能力がある。高度な信号処理と測定シナリオの限定がポイントとなる。

ドローン制御(手持ちも含む)とレーダシステムの同期

正確なデータを得るには、アンテナの方向やシステムの振動を細かく制御する必要がある。プラットフォームの制御とレーダシステムの動きを補正することが重要である。

40GHz帯域を持つ超広帯域ミリ波レーダを光技術でわずか約200gの重さに集積し、小型ドローンに搭載できました。

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